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2008年度夏学期全学自由研究ゼミナール

講義名:なわばりの数理 --- 幾何学からの数理工学入門


講義の目的:

 生物が餌場を争ってできるなわばり、コンビニが顧客を囲い込んでできる商圏、結晶が核から成長してできる単結晶領域、河川が雨水を受け持つ流域、救急病院や公立図書館などの公共施設がサービスを受け持つ地区など、いくつかの個体が勢力を競い合って形成する空間分割図形を「なわばり」という概念で捉えることによって、自然界や人間社会における多くの現象が統一的視点から解析できるとともに、さまざまなものづくりに役立つことを学ぶ。これは、数学を道具に用いて現実の諸問題を解決する方法論の確立を目指す「数理工学」という学問の一例である。数理工学で最も重要なことは、現実世界の現象を、その本質を失うことなく単純化し、数学の言葉で記述して、数学という道具が使える舞台に乗せることである。この作業は、現象の数理モデリングとよばれる。「なわばり」というものの見方を手がかりとして、身の回りの現象を抽象化する数理モデリングのおもしろさと有用性を一緒に体験できたらいいと思っている。

講義計画:

 個体が勢力を競い合ってできる「なわばり」は、自然界の多くの場面で観察できる。そのため、結晶学、生物学、気象学、材料科学、地理学、幾何学、社会科学など多くの学問領域で、独立に発見または再発見されてきたという経緯から多くの名前をもつ。勢力圏図、ボロノイ図、ディリクレ分割、ティーセン多角形などがその例である。講義では、この「なわばり」という概念を基本に置くことによって、さまざまな現象が統一的・横断的に理解でき、さらに望みの構造を設計できるという数理的手法の多産さ・有用さを学ぶ。具体的には、つぎのような内容を予定している。
1.なわばりとそのバリエーション
2.自然界に現れるなわばり
3.なわばり図形の数学的諸性質
4.なわばり図形の計算アルゴリズム
5.さまざまな空間におけるなわばり
6.さまざまな影響力から作られるなわばり
7.なわばりと地理情報検索
8.観測値のなわばりとデータ補間
9.計算幾何学への応用
10.施設のなわばりと地理的最適化
11.図形のなわばりとパターン認識
12.なわばりの均衡化とメッシュ生成
13.隙間の構造化と図形の充填
14.規則的なわばりとタイリング
15.なわばりとフラクタル図形

場所と時間:

 駒場キャンパスの講義室(部屋は未定)
 毎週火曜日5限(16:20−17:50)
 初回は2008年4月15日(火)この日はガイダンスを兼ねる