卒業生の声(数理情報工学)

卒業生の声(数理情報工学)

2009年度現在

戸坂凡展 (2001年修士課程修了,現 日本銀行 金融機構局 企画役補佐 )

計数工学科を選択した理由は、「パズルみたいな数学を学べて面白そう」という単純なものだったのですが、今思えば我ながら素晴らしい選択だったと思っています。

学生時代には、例えば、グラフ理論、最適化、アルゴリズム、暗号、確率論、MCMC、ニューラルネットなど、進学目的どおりに本当にパズルみたいな感覚で楽しみながら学ぶことができました。正直なところ、上記のうちいくつかは使うことはないだろうと思いながら学んでいたのですが、卒業して今まで金融機関で仕事をしてきたなかで、幸か不幸かいずれも使われている場面に遭遇してしまいました。今更ながら、どれももっとしっかり学んでおけばよかったと後悔するくらい、講義のカリキュラムは有益で本当に素晴らしいと思います。

ちなみに、当方の今現在の仕事について言えば、金融機関等へのヒアリングを通じて情報収集し、議論するといった類の仕事をしているため、計数での知識を必ずしも必要とはしていません。しかし、業界にはOB/OGが比較的多いようで、ヒアリング相手が幸運にもしばしばそうした人であるなど、とても助かったことが多々ありました。どうやら有益な知識のみならず人脈まで得てしまっていたようで、計数に進学して本当に良かったと思っています。


 製薬会社で新薬の開発に携わっている、と聞くと、工学部計数工学科の卒業生としては異色に感じるかもしれません。新薬の開発では、患者さんに新薬候補の物質を使用していただいて有効性と安全性を評価する「臨床試験」が必須です。どのように試験計画を組み、取得したデータを解析して結論を導き出すかを考えるのが私たち統計解析担当であり、実験計画、数理統計といった計数工学科で学んだ基礎の上で日々仕事をしています。

 進振りで計数工学科を希望したときは、世の中に分かりやすくアウトプットできる勉強をしたいと漠然と考えながらも具体的に何というのが思い当たらず、計数工学科ならば実業に直結した色んなことができそうだと、結論を先延ばしする気持ちがあったように思います。計数工学科で学ぶうちに統計を専門と考えるようになり、成り行きのような面もありながら、気がつけば大学時代の専門を実務として生かす仕事をしています。ここで出会った先生方、仲間たちは私の財産であり、卒業からかなりの年月が経った今もなお、仕事で迷ったことを相談したりしています。

 正直に言えば、学生時代は製薬業界で統計が重要な役割を果たしていることを知りませんでした。しかし、この業界で著名な先生方、また会社に所属しながら業界のリーダー的立場で活躍されている統計家の方々に、多くの計数工学科卒業生がいることに驚かされます。社会人になってから改めて計数工学科の大きさを感じ、同窓としてのつながりを誇らしく思いながら、諸先輩方に少しでも近づきたいと小さな一歩を積み重ねています。



以下の所属は2003年度現在

松永祐子 (2002年修士課程修了,現 NECラボラトリーズ インターネットシステム研究所)

 計数工学科を卒業、その修士課程を修了後、現在の職場で働き始めてちょうど1年が経ちました。現在は、大量のデータから有用な知識を獲得するための技術である、データマイニング技術の研究開発をしています。情報理論や機械学習理論に基づいたデータマイニングエンジンの設計を行っており、計数工学科で学んだことを大いに活かせる魅力的な職場です。

 大学2年生の時、計数工学科への進学を決意した際には、正直に言って何をする学科なのかあまり分かっていませんでした。数学が好きでかつ世の中に役立つ技術を創りたいから、という抽象的な考えで学科を選びました。けれども、講義や演習を通して学科のことを知るにつれて、本当にこの学科を選んでよかった、と思うようになりました。

 計数工学科は、将来応用技術を創るための基礎を幅広く学ばせてくれる学科です。数学が好きでその応用を柔軟に考えたい、という人にとっては、最適な学科であり、充実した楽しい学部生活を送ることができる場所だと思います。


竹内広宜 (2000年 計数工学専攻修士課程修了,現 日本IBM株式会社 東京基礎研究所)

 “計数工学科とは何をするところ?”このような質問を在学中そして就職をしてからも頻繁に受ける。学科名からその中身が想像できないために受ける質問だと思うが、たいていは“なんでもやれるところ”と答える。いろんなことをやっていて、何でもできる学科だというのは間違った答えではないと思う。

 私自身も学部の卒業研究は計測の研究室、修士課程では数理の研究室に所属した。どちらの研究室でも主体的にテーマを見つけ自分の好きな研究ができた。これは私だけが感じることではなく多くの同期が共通して感じていることだと思う。皆それぞれ、これぞと思った研究をしていて、研究紹介の輪講はいつも興味深かった。

 私は修士課程を修了し、現在企業の研究所で情報検索などの研究を行っている。ビジネス環境の変化に機敏に反応し、どのような技術が求められていてかということを常に意識しながら研究しなくてはいけない中で、計数工学科で得た研究に対する姿勢や幅広い研究に触れられたことは現在非常に貴重な財産となっている。


宮沢裕之 (2002年修士課程修了, 東京海上火災保険(株)財務企画部)

 損害保険会社の運用部門でミドルオフィスの仕事に従事している。具体的には、数理モデルを用いたリスク計測やデータ分析を行っている(一般に金融工学と呼ばれている分野)。まだ入社1年目ではあるが、自分が学んできた数理工学が現実の世界に応用される場面に立ち会えるのはとてもエキサイティングだ。

 計数で学んで現在の仕事に役立っていることが2つある。1つめは、数理工学や金融工学の理論の柱となる基本的な考え方を学生時代にじっくりと学べたこと。もう1つは、最先端の研究をしている先生、助手、学生達に出会えたこと。仕事を始めて3ヶ月くらい経った頃、久しぶりに顔を出そうと計数工学科に遊びに行ったことがあった。そのとき、数理第3研の岩田先生に何となしに仕事上作っていた最適化プログラムで困っていることを話したら、即座にその解決法が載っている本を2冊ほど紹介してくださった。改めて計数工学科の凄さを感じることができたのであった。


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