- ◆実験内容:
- 光学系によってFourier変換が実現されることを理解することが目的です.実験は,2次元図形を数値的にFourier変換した像を作成し,光学系を通すことで,逆Fourier変換を実現し,最初に意図した図形が再現されることを確認するものです.フィルムや写真の現像など,普通なかなか経験できないような作業を行なえます.
- ◆助手から学生へのアドバイス:
- Fourier変換という数学的な操作を,現象として目で見ることができる実験です.実験の作業そのものは,それほど難しいものではなく,それなりに面白いのですが,実験の理論的背景をよく理解された上で行なえば,より興味深い実験になると思います.
- ◆学生からのコメント:
- 光学系によりFourier変換が実現することを理解できてたいへん良かった. Fourier変換により予想以上にはっきりと像の再現ができて驚いた.写真の現像が体験できて面白かった.図形のFourier変換をするプログラムの作成にはてこずった.
年: 2018年
カオスシステム
- ◆実験内容:
- 簡単な電子回路を製作し,分岐現象やダブルスクロールと呼ばれるカオス的な現象をオシロスコープで観察する.また, 回路の数値シミュレーションや部分的な観測からのアトラクタの再構成も行う.実験後半では二重振り子の数値シミュレーションを行う.
- ◆助手から学生へのアドバイス:
- この実験は回路の製作が主ですが,電子回路に慣れてない人も多く,苦労しているようです.回路の修正が楽にできるように半田付けの必要ないブレッドボードを使っているので,思い込みを捨てて,落ち着いて回路の間違いを探すようにしてください.回路に不慣れな人は,実験前にあらかじめブレッドボード上の配線図を準備しておくと良いかもしれません.
- ◆学生からのコメント:
- 安定な周期解から非周期的なものへの変化,ストレンジアトラクタが存在するパラメータ領域と周期アトラクタが存在する領域が交互に表われる様子など,カオス現象を視覚的にらえることができてとても面白かった.カオスを身近に感じられるようになった.
ウェブグラフを用いたグラフ探索アルゴリズムの実習
- ◆実験内容:
- この実習は,離散手法に関する学習を行なうことを目的とします.実習では,ウェブページとリンクとをそれぞれ節点 (ノード) と辺 (エッジ) とに見立てた「ウェブグラフ」を題材とし, JavaもしくはC言語でのプログラム作成を行います.
(数理情報第七研究室と共同実験) - ◆助手から学生へのアドバイス:
- 日頃ウェブブラウザを用いてインターネット上の情報を閲覧していることと思います.本実験で, ウェブの構造の数理的な側面にも興味を持ってもらいたいと思います.
- ◆学生からのコメント:
- 普段何気なく使用しているWebのグラフ構造をプログラムで抽出できることと,それをGraphvizを使用してビジュアルに表示できることに興味を持った.
キャッシュ
キャッシュ(cache)とは、プロセッサと主記憶の間に置かれる、主記憶より小容量だが高速な記憶装置であり、使用頻度の高い情報(データと命令)の写しを保持することで、低速な主記憶へのアクセスを減らし処理を高速化する事を目的とする。平均的なメモリアクセス時間を短縮し処理を高速化するには、キャッシュのヒット率(参照情報がキャッシュにある確率)を高く、アクセス時間を短くする必要があるが、これらはトレードオフの関係にある。例えば主記憶の情報をキャッシュに保持する際の配置自由度を増やせばキャッシュヒット率は向上するが,キャッシュ内の探索箇所が増えるためにアクセス時間は増大する.ここで,主記憶の情報がキャッシュ内のN箇所いずれかに格納可能である方式をNウェイセットアソシアティブ(N-way set associative)方式といい,このNを連想度と呼ぶ.
仮想記憶
仮想記憶(virtual memory)とは,限られた容量の主記憶と大容量の補助記憶装置(具体的にはディスク装置が広く使われる)からなるメモリ階層において,ハードウェア機構とオペレーティングシステムのサポートにより,ユーザに主記憶の容量を意識させることなく大容量のメモリ空間を仮想的に提供する技術である。仮想記憶方式においては2つのアドレスが存在し,1つは主記憶として実装してある容量に対応する実アドレス(物理アドレス),他方は仮想的に実現される容量に対応する仮想アドレス(論理アドレス)である。ソフトウェアに提供されるのは仮想アドレス空間であり,実際のハードウェア上で実行する時には,仮想アドレスを実アドレスに変換する必要がある。このアドレス変換方式には,アドレス変換の単位が固定であるページング方式と,可変であるセグメンテーション方式がある.
補数表現
任意の数値に対して,ある定数からその数値を引いた数値を補数と言い,補数表現は主にコンピュータ内で負の数値を表わすために用いられる.通常,LSI内では低電位か高電位の2状態があり,それぞれ論理0と論理1として捉え,数値は論理0と論理1の組み合わせから成る2進数により表現される.2の補数表現を用いることにより減算を加算として扱うことができ,回路が簡略化されるため,コンピュータ内で数値を表わす時は2の補数表現が広く利用されている.
順序回路
回路の出力が現時点での外部入力のみでは決まらず,内部の状態にも依存して決定される回路を順序回路と言う。順序回路は記憶を持った回路であり,状態を記憶する素子としてラッチやフリップフロップと呼ばれる回路が使用される。一方,外部入力のみで出力が決定される回路を組み合わせ回路と言い,順序回路は組み合わせ回路と記憶素子により構成されると捉えることも出来る。記憶素子にはRS型,D型,JK型など様々な構成があり,タイミング制御方式もクロック信号に同期して状態を遷移させるものや,データ入力に応じて状態を遷移させる非同期式のものがある.
フォールトトレラント計算システム
計算システムが所望のサービスをユーザに提供しなくなった時,この異常を障害(failure)と言い,その原因となるシステム構成要素(ハードウェアとソフトウェアを含む)の異常をフォールト(fault)あるいは故障と呼ぶ.システムの高信頼化には,障害の原因となるフォールトが発生しないようにするフォールトアボイダンス(fault avoidance)と,フォールトが発生してもシステムとしては障害に至らないようにするフォールトトレランス(fault tolerance)の2つのアプローチがある.フォールトトレランスは,システム構成に冗長性を与えることで実現される.フォールトトレラント計算システムに求められる性質としてRASと呼ばれる信頼性(Reliability),可用性(Availability),保守性(Serviceability)がある.
超高速低消費電力プロセッサ
トランジスタのスイッチング速度は電源電圧にほぼ比例する一方、スイッチング時の消費電力は電源電圧の二乗にほぼ比例する。したがって、プロセッサの高速性と低消費電力化は相反する要求であり、高性能マイクロプロセッサにおいては冷却可能な消費電力に抑えつつ高速化を図ることが困難となりつつある。この問題に対しては、プロセッサ内の全てのトランジスタが常に高速動作が必要とされていないことに着目し、不急の処理をする部分の電源電圧を落とし、プロセッサの処理能力を維持しながら消費電力を下げる手法が必須となる。その実現には、高速化とプロセッサの内部状態把握を同時に実現可能なアーキテクチャレベルの技術から、不急時に効果的に電力を低減可能なデバイスレベルの技術までを,新規提案し有機的に組み合わせる必要がある.
非同期計算システム
VLSI製造技術の進歩により一つのチップに搭載出来る素子数は飛躍的に増加しており,チップ全域へのクロック分配を必要とする同期式システムでは,クロック信号分配に伴う消費電力,位相のずれ等が問題となる.このような同期式システムの性能及び信頼性上の限界を打破する手段の一つが,事象生起の因果関係のみを駆動原理とする非同期式システムによる実現である.非同期式システムでは,必要なときに必要なところしか動作しないため消費電力が低く,前の動作を確認して次の動作を行うため遅延変動に対する耐性が高いシステムを実現することが出来る.非同期VLSIシステムのアーキテクチャとCADシステムの研究開発を行う.