演算増幅器

◆実験内容:
 演算増幅器(operational amplifier)を用いた種々の回路を作成し,動作を解析することにより演算増幅器の基本特性を理解し,アナログ回路の基本として,その使用法を修得する.
◆担当教員から学生へのアドバイス:
 信号処理,制御,回路など計測の基本となる幾つかの分野との関係が直接的で分かりやすい実験である.与えられた課題を漠然とこなすのではなく,各課題の理論的な背景や回路による実現の鍵について,きちんと消化しながら実験を進めてほしい.

ディジタル信号処理と音響システム

◆実験内容:
 本実験の課題は,ディジタルフィルタの係数と特性の関係を考え,それに基づいて実時間ディジタルフィルタを設計し,その特性を実測により確認することである。さらに実際の信号処理に応用してみることにより,ディジタル信号処理の一端を体験する。
(関連講義:信号処理論第一, 信号処理論第二)
◆担当教員から学生へのアドバイス:
 時間領域と周波数領域における信号表現の対応関係を良く理解しておく(フーリエ級数展開,フーリエ変換, サンプリング定理, 窓関数).

演算増幅器の基礎とセンサ回路への応用

◆実験内容:
 計測工学とは,長さ・重さといった単一の物理量をはじめとし,環境や人間行動といった複雑なものまでをも含む「自然現象」から必要な情報を抽出する技術体系のことである.そのフロントエンドであるセンサの基本は信号変換であるが,現在の電子計算機を主体とする電気文明下では物理情報を電気信号に変換するのが便利である.しかしながら一般にセンサ出力は微弱であり,直接パソコンにつないで信号が取り込めるものでも直接アクチュエータを駆動できるものでもない。そのため,センサの次段には演算増幅器が配される場合が多い.本実験では,演算増幅器を用いた種々の回路の解析法やシミュレーション法を習得し,演算増幅器の特性や基本回路を理解する.また,センサ回路を実際に構成し,センサの原理や使用法,センサシステムの構成法を学ぶ.
◆担当教員から学生へのアドバイス:
 センサ素子において物理量が電気信号に変換される仕組みを物理現象のレベルで把握する.センサ出力(電圧, 電流, 電荷,周波数等)を適切に処理するための検出回路の動作や性質を理解しておく.

パターン認識システムの製作

◆実験内容:
 文字認識に代表されるように、元来人間がおこなってきた判別作業を機械に行わせることは工学上重要な課題である。本実験では、各種センサからの入力をもとに、対象のパターンを判別する認識システムを製作する。
◆助手から学生へのアドバイス:
 プレッシャーを感じずに、気楽に実験を進めていってほしいと思います。

二足歩行ロボットの改良

◆実験内容:
 二足歩行ロボットを用意しています.カメラやマイク,センサー等を利用することで様々な改良が可能になります.

◆助教から学生へのアドバイス:
 例えば,信号を認識して交通ルールに従って歩くロボット,周囲の声に反応してスイカ割りを行うロボット,ブランコをこいだりスケートをするロボットに改良できます.アイディア次第で他にも面白い動きをする二足歩行ロボットにできるでしょう.

動くおもちゃを作ろう

◆実験内容:
 自由にアイデアを出してもらって、何らかの目的を持って動くおもちゃを作ってもらいます。過去にはパソコンとつないで PIC で制御するものを作ってもらったことが多いですが、必須というわけではありません。性能や実用性は二の次でも構わないので、見る人をあっと言わせる、おもしろいおもちゃを作って下さい。
◆助手から学生へのアドバイス:
 手を動かして作業をしてみると、頭で考えていてはまったく想定できない、でも気がついてみれば当り前の問題にぶつかる、ということがよくあります。この演習では、数理情報の授業では数少ない、物を作る場面を提供しますので、このような貴重な体験ができることと思います。ぶつかった問題をどう解決するか、やわらかい頭で知恵を絞ってみて下さい。共同作業でアイデアを出し合う経験も、将来の役に立つことと思います。

計算機ホログラフィー

◆実験内容:
 光学系によってFourier変換が実現されることを理解することが目的です.実験は,2次元図形を数値的にFourier変換した像を作成し,光学系を通すことで,逆Fourier変換を実現し,最初に意図した図形が再現されることを確認するものです.フィルムや写真の現像など,普通なかなか経験できないような作業を行なえます.
◆助手から学生へのアドバイス:
 Fourier変換という数学的な操作を,現象として目で見ることができる実験です.実験の作業そのものは,それほど難しいものではなく,それなりに面白いのですが,実験の理論的背景をよく理解された上で行なえば,より興味深い実験になると思います.
◆学生からのコメント:
 光学系によりFourier変換が実現することを理解できてたいへん良かった. Fourier変換により予想以上にはっきりと像の再現ができて驚いた.写真の現像が体験できて面白かった.図形のFourier変換をするプログラムの作成にはてこずった.

カオスシステム

◆実験内容:
 簡単な電子回路を製作し,分岐現象やダブルスクロールと呼ばれるカオス的な現象をオシロスコープで観察する.また, 回路の数値シミュレーションや部分的な観測からのアトラクタの再構成も行う.実験後半では二重振り子の数値シミュレーションを行う.
◆助手から学生へのアドバイス:
 この実験は回路の製作が主ですが,電子回路に慣れてない人も多く,苦労しているようです.回路の修正が楽にできるように半田付けの必要ないブレッドボードを使っているので,思い込みを捨てて,落ち着いて回路の間違いを探すようにしてください.回路に不慣れな人は,実験前にあらかじめブレッドボード上の配線図を準備しておくと良いかもしれません.
◆学生からのコメント:
 安定な周期解から非周期的なものへの変化,ストレンジアトラクタが存在するパラメータ領域と周期アトラクタが存在する領域が交互に表われる様子など,カオス現象を視覚的にらえることができてとても面白かった.カオスを身近に感じられるようになった.

ウェブグラフを用いたグラフ探索アルゴリズムの実習

◆実験内容:
 この実習は,離散手法に関する学習を行なうことを目的とします.実習では,ウェブページとリンクとをそれぞれ節点 (ノード) と辺 (エッジ) とに見立てた「ウェブグラフ」を題材とし, JavaもしくはC言語でのプログラム作成を行います.
(数理情報第七研究室と共同実験)
◆助手から学生へのアドバイス:
 日頃ウェブブラウザを用いてインターネット上の情報を閲覧していることと思います.本実験で, ウェブの構造の数理的な側面にも興味を持ってもらいたいと思います.
◆学生からのコメント:
 普段何気なく使用しているWebのグラフ構造をプログラムで抽出できることと,それをGraphvizを使用してビジュアルに表示できることに興味を持った.

キャッシュ

キャッシュ(cache)とは、プロセッサと主記憶の間に置かれる、主記憶より小容量だが高速な記憶装置であり、使用頻度の高い情報(データと命令)の写しを保持することで、低速な主記憶へのアクセスを減らし処理を高速化する事を目的とする。平均的なメモリアクセス時間を短縮し処理を高速化するには、キャッシュのヒット率(参照情報がキャッシュにある確率)を高く、アクセス時間を短くする必要があるが、これらはトレードオフの関係にある。例えば主記憶の情報をキャッシュに保持する際の配置自由度を増やせばキャッシュヒット率は向上するが,キャッシュ内の探索箇所が増えるためにアクセス時間は増大する.ここで,主記憶の情報がキャッシュ内のN箇所いずれかに格納可能である方式をNウェイセットアソシアティブ(N-way set associative)方式といい,このNを連想度と呼ぶ.